水力発電所では、長期間にわたり安定して電力を供給するために、
水車(ランナ・主軸・ケーシング・ガイドベーン)や発電機(固定子巻線) の健全性を正しく把握することが欠かせません。
その中心となるのが 設備診断技術。
この記事では、水車の非破壊検査から、発電機絶縁の劣化要因、そして定期試験の意味まで、
専門用語をかみ砕いて解説します。

このテーマは、令和7年度電験2種試験 電力管理第一問目の穴埋め形式で出されました。非破壊検査の機械的劣化の診断技術は参考書に載ってなくて厳しいけど、後半の電気試験は定番だから、できれば得点取りたい部分でもあります。
水車の劣化診断:非破壊検査(NDT)が主役
水車は水流による力を直接受けるため、
曲がり部・フランジ付け根・溶接部などの応力集中部 に欠陥が生じやすい。
そこで使われるのが 非破壊検査(NDT)。
代表的なのは次の3つです。
強磁性体に磁場をかけ、表面の亀裂から漏れる磁束に磁粉が吸い寄せられる現象を利用する検査。
特徴
- 表面の開口欠陥を短時間で広範囲に検査できる
- 微細な欠陥は苦手
- 主軸・ランナなどの表面亀裂検出に最適
イメージ図👇

蛍光染料や着色液を表面に浸透させ、欠陥から染料がにじみ出ることで検出する方法。
特徴
- 非磁性材料(ステンレスなど)にも使える
- 表面の細かい割れに強い
- ランナ翼の表面割れ、溶接部の検査に有効
イメージ図👇

超音波を内部に送り込み、反射エコーから内部欠陥を探す検査。
特徴
- 内部欠陥の位置・大きさを把握できる
- 表面だけでなく内部の健全性評価に必須
イメージ図👇

2. 発電機固定子巻線の劣化:4つの要因
次に、水車発電機の固定子(電機子)巻線の劣化について解説します。固定子巻き線は、長年の運転で絶縁が劣化します。
劣化要因は次の4つです。
🔥 2-1. 熱的劣化(温度上昇による劣化)
- 運転中の温度上昇で絶縁材料が徐々に劣化
- 絶縁紙・樹脂が硬化・ひび割れ・炭化する
🔌 2-2. 電気的劣化(サージ・過電圧など)
- 雷サージや開閉サージで局部的に高電圧がかかる
- 絶縁内部に部分放電が発生し、炭化・ボイド拡大を招く

👉 熱的劣化=温度による“ゆっくり劣化”
👉 電気的劣化=過電圧による“瞬間的ダメージ”
🔧 2-3. 機械的劣化(ヒートサイクル)
- 始動停止の繰り返しで膨張・収縮
- コイルが擦れたり、固定が緩んだりする
💧 2-4. 環境的劣化(吸湿・汚損)
- 湿気を吸うと絶縁抵抗が低下
- 汚れが付着すると漏れ電流が増加

👉 吸湿とは?
絶縁材料が空気中の水分を吸い込むこと。
3. 絶縁性能を確認する定期試験
劣化要因を理解したうえで、発電機の絶縁状態を“実際にどう評価するか”が重要です。
そのために、以下のような試験が行われます。
3-1. 絶縁抵抗測定(メガー試験)
- 絶縁が健全なら電流はほとんど流れない
- 劣化していると漏れ電流が増える
3-2. 誘電正接試験(tanδ)
交流電圧を印加したときの“発熱損失”を見る試験です。
- 絶縁が劣化すると内部損失が増え、tanδが大きくなる
- 絶縁の“老化度”を見るのに有効
3-3. 直流試験
巻き線に直流電圧を印加して、成極指数を測定することでコイルの表面の汚損や吸湿の程度を調べる試験です。
正極指数=充電電流の10分値/充電電流の1分値
=10分後の絶縁抵抗値/1分後の絶縁抵抗値
吸湿するほど漏れ電流は大きくなり、「充電電流の10分値」=「10分後の絶縁抵抗値」が小さくなり、結果的に正極指数が小さくなる。つまり正極指数が小さいほど危険な状態です。
| 正極指数 ≧1.0 | 1.0>正極指数>0.5 | 0.5≧正極指数 |
| 良好 | 要注意 | 危険 |
3-4.交流電流試験
巻き線に交流電圧を印加して、電圧に対して流れる電流を測定することでコイルの表面の汚損や吸湿の程度を調べる試験です。
- 健全な絶縁:電圧と電流が比例
- 劣化すると電流の増加率が上がる
3-5.部分放電試験(PD)
交流電圧を印加してコロナ放電の電荷量を測定して絶縁内部のボイドや吸湿の程度を測る試験です。
- 内部欠陥の早期発見に有効
4. まとめ
水車の検査から発電機の絶縁試験まで整理してみると、自分でも理解が深まりました。複雑に見える診断技術も、流れでつなげてみると意外とシンプルです。試験ででてきたらなかなか解くのは難しいかもしれませんが、ぜひもっと深く勉強してみてください。

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