プラント設備やビル設備の電源設計では、UPS(無停電電源装置)やDC電源装置の仕様選定が重要です。
特に非常電源として蓄電池を使う場合、セル数・放電終止電圧・温度補正・保守率・負荷特性など、見落としがちなポイントが設計の成否を分けます。
この記事では、現場でよく迷う「UPS/DC電源選定の5つの確認項目」を、技術者目線でわかりやすく解説します。
① 蓄電池の種類と選び方|MSE型が国内主流
まずは蓄電池の種類から。UPSやDC電源装置に使われる蓄電池にはいくつかのタイプがあります。
| 種類 | 公称電圧 | 特徴 | 寿命目安(25℃) |
|---|---|---|---|
| MSE型鉛蓄電池 | 2V/cell | 国内主流。コスト・保守性に優れる | 約7〜9年 |
| 長寿命型MSE | 2V/cell | 寿命延長タイプ。寸法・重量は増加傾向 | 約9〜12年 |
| リチウムイオン電池 | 3.6V/cell | 長寿命・軽量だが高価 | 約13〜15年 |
国内ではMSE型鉛蓄電池(長寿命型含む)が主流です。満充電時に1セルあたり2Vを出力し、複数セルを直列接続することで高電圧を構成します。
リチウムイオン電池も選択肢ですが、長寿命型MSEと実用寿命は大差なく、コスト面で不利な場合もあります。
② 放電終止電圧とは?|DC UPSでは特に重要
放電終止電圧とは、蓄電池が放電を停止すべき電圧のことです。これを下回ると電池劣化や機器停止のリスクが高まります。
- 一般的な範囲:1.9〜1.6V/cell
- UPSの場合:インバータが電圧を補償するため、メーカー標準値で問題なし
- DC電源装置の場合:補償機能がないため、蓄電池の出力電圧=機器の入力電圧
✅ 設計例:DC100V
MSEを50セル直列 → 2V × 50 = 100V(満充電)
放電終止電圧を1.8Vとすると → 1.8V × 50 = 90V(停止直前)
この90Vが機器の最低動作電圧を下回らないか、制御電源設計と突き合わせて確認が必要です。
周囲温度と容量補正|K値で見積もる
蓄電池の容量は温度によって大きく変化します。設置場所の温度条件に応じて、容量補正係数(K値)を使って設計します。
| 周囲温度 | 容量補正係数(K値) | 備考 |
|---|---|---|
| 25℃ | 1.00 | 標準条件 |
| 5℃ | 約0.80 | 冬季・屋外設置で要注意 |
| −5℃ | 約0.65 | 寒冷地では容量増設が必要 |
温度が低いほど容量が減少するため、必要な蓄電池容量は増加します。
UPSやDC電源の設計では、最低温度条件を5℃以下に設定することで安全側設計になります。
④ 保守率(余裕率)|寿命と過放電対策
蓄電池は長期間使用することで容量が劣化します。これを加味して、保守率(余裕率)を設定します。
- 一般的な設定値:0.9〜0.8
目的
・長期使用による容量低下への備え
・過放電防止による寿命延長
設計段階では、0.8〜0.9の係数を掛けて容量を見積もることで、実運用時のトラブルを防げます。
⑤ 負荷特性カーブ|DC電源は制御用途が中心
DC UPSは主に制御電源用途で使われるため、負荷特性は比較的シンプルです。
ただし、短絡電流・突入電流などの特性は別途確認が必要です。
- 制御機器の電圧変動許容範囲
- 起動時の突入電流
- 負荷の定常電流とピーク電流
これらを踏まえて、電気設計側で特性カーブを作成し、UPS/DC電源の仕様と整合させましょう。
✅ まとめ|UPS/DC電源設計で必ず確認すべき5項目
UPSやDC電源装置の選定では、以下の5つを必ず確認しましょう
- 蓄電池種別:MSE型が主流。寿命とコストのバランスを考慮
- 放電終止電圧:DC UPSでは機器の最低動作電圧と整合必須
- 周囲温度:K値で容量補正。寒冷地では容量増設が必要
- 保守率:0.8〜0.9で余裕を持った設計を
- 負荷特性:制御機器の電流特性と突入電流を確認
UPSメーカー任せにせず、制御・保護・DCS側の要求電圧と突き合わせて設計することが、第一歩です。


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